岡野岬石の資料蔵

岡野岬石の作品とテキスト等の情報ボックスとしてブログ形式で随時発信します。

『仏陀』増谷文雄 著 角川選書ー18

『ジョルジョ・モランディ展』 神奈川県立美術館カタログ(1989年)

投稿日:2020-12-08 更新日:

『ジョルジョ・モランディ展』 神奈川県立美術館カタログ(1989年)

■最後のモランディ,彼の制作の宿命(ヴィターリ)は,存在の探究が極限にまで達した後,非存在や無の表現にかくも近づいたのである。今やモランディは,存在と非在の対立物として現れない対立を通して,この哲学的叡智に到達し,そしてあらゆる物について,一時的な違いよりもその等しさに気づくのである。

存在することも存在しないことも,もはや同一であるように思われる。今では,もはや「トゥ・ビー」か「ノット・トゥ・ビー」の間の根本的な選択という,西洋文明がいつも新たにしてきた,シェイクスピアの問いの問題ではないのだ。今問題なのは,二つの対立物をともに結びつけることであり,存在するものと存在しないものを分けるものはほとんどない,ということを(柔順な紙や水彩を通して,油彩とカンヴァスを通して,そしていつも知性と視覚の叡智を通して)発見することなのである。(『ジョルジュ・モランディ――抽象と実在』メルチェデス・ガルベーリ)(17頁)

■「モランディは画布の塵をはらう。『死ぬ前に2点の絵を完成させたい。重要なことは,根底に,事物の本質にふれることである』。本質といっているが存在を意味しているように感ぜられる。見え方ではなく存在。われわれは,本質を,古典主義者の声高な宣言にむなしく追究されるあの客観主義の告白となる」。

このインタヴューそのものをジュゼッペ・メルシカはヴェネツィアのアルコバレーノ画廊でおこなわれたモランディ展の評(「エンポリウム」,1938年7月)に借用しているようで,芸術家のモノグラフがないことを嘆いたあと,モランディは「事物の本質に倦むことなく触れようとしている」と再言。(『言葉と視覚 バッケッリからアルカンジェリにいたる主要なモランディ解釈のテーマと方向(1918-64年)』エレーナ・ポンティッジャ)(179頁)

(2012年3月5日)

-『仏陀』増谷文雄 著 角川選書ー18

執筆者:

関連記事

『カント』 坂部恵著 講談社学術文庫

『カント』 坂部恵著 講談社学術文庫 ■クヌツェンの論理学提要には、まったく経験論的な、(ロックをおもわせると同時に)すでに後年のカントをおもわせもするつぎのような章句がみられる。 「知性のなか、さら …

no image

『明治 大正の詩』日本の詩 ほるぷ出版

■沖の小島(国木田独歩) 沖の小島に雲雀があがる 雲雀すむなら畑がある 畑があるなら人がすむ 人がすむなら恋がある(24㌻) ■希望(土井晩翠) ・・・略 港入江の春告げて 流るる川に言葉あり、 燃ゆ …

no image

画中日記(2016年)

画中日記(2016年)  2016.01.03 【新年に】  新しい年を迎えて、今日で3日目だ。私の場合、画は美神への信仰なので、新年といえども、やる事はおなじで絵を描いている。それでも、年がかわると …

彫刻作品

  トルソー/真鍮/2005年 トルソー/真鍮/2005年 スパイラルトルソー/ブロンズ/2005年 スパイラルトルソー/真鍮/2005年 スパイラルフォーム/真鍮/2005年 スパイラルフ …

2019年作品

瀬戸内百景 石見畳が浦海蝕洞(1)/S15号/油彩/2019年 石見畳が浦海蝕洞(2)/S15号/油彩/2019年 石見畳が浦海蝕洞(3)/S15号/油彩/2019年 波張崎朝光/S15号/油彩/20 …